2023.06.03
樹脂歯車の騒音が発生する原因と対策!
樹脂歯車に求められる品質(精度・騒音・耐久性)が高まり、騒音でお困りの方も多いのではないでしょうか?樹脂歯車の不快な騒音や振動は、歯車損傷の原因となることもあるため対策が必要です。今回は、騒音発生時の原因追究及び低騒音歯車の製作が容易になるよう、代表的な歯車騒音の原因と対策を事例と共にご紹介します。
1.振動・騒音の原因究明はなぜ難しいのか?
まず初めに、なぜ歯車の低騒音化が容易ではないのかについてご説明します。樹脂歯車の騒音は、非常に多くの要素からなり、歯のかみ合い挙動が原因として発生します。このかみ合い挙動は、一組の歯車だけでなく、軸、軸受け、ギヤボックス、歯車を駆動する系・駆動される系など全体を総合的に考える必要があり、非常に複雑で原因追究が難しいのです。
2.歯車騒音の代表的な要因
次に、歯車形状が騒音の原因と考えられる場合に確認すべきポイントをご紹介します。
1.たわみ
プラスチックは金属と比較して弾性率が非常に低く、負荷がかかると簡単にたわんでしまいます。歯のたわみによりインボリュート形状が歪むことで、不均一な動きが発生し騒音の要因となります。
2.歯形誤差
歯形誤差が多いと、力の伝達を上手く行うことができず騒音の要因となることがあります。これは、熱膨張や熱収縮、リブ構成、ゲート位置などを考慮した金型設計が上手く行われていない場合に起こる可能性があります。
3.ピッチ誤差
ピッチ誤差が増大するとかみ合い時の衝撃が大きくなり、歯車の回転ムラから生じる騒音が発生します。こちらも熱膨張や熱収縮、リブ構成、ゲート位置などを考慮した金型設計が上手く行われていない場合に起こる可能性があります。
4.干渉
歯車同士が干渉すると騒音を発生します。歯車の干渉は、振れや真円度の欠如など歯車精度が原因で起こることが多く、歯車の設計段階から注意が必要です。歯先をRにしたり歯形修整することで、滑らかにかみ合いやすくなり低騒音になります。
歯形修整についてはこちらでも詳しくご紹介しております。
5.かみ合い率
かみ合い率が小さいと、ギヤ同士が接触・非接触を繰り返す際の負荷が大きくなり騒音を発生させます。かみ合い率は歯車の精度・歯形修整で対応することが可能で、強度や振動・騒音の改善が期待できます。
6.樹脂
吸水や温度上昇により歯車が膨張すると、適切なバックラッシを維持することができず騒音が発生することがあります。特に高速回転で使用する場合は、歯面温度が急激に上昇することもあるため注意が必要です。
3.低騒音歯車を製作するポイント
設計・開発者の皆様が設計・試作段階からできる、低騒音な歯車づくりのポイントを2つご紹介します。
1.設計段階から樹脂歯車メーカーへ相談
「2.歯車騒音の代表的な要因」でご紹介したように、騒音の要因は様々であり原因追及が難しいため、歯車・金型設計段階から低騒音歯車への有効な対策を行うことが大切です。ご相談いただく時期が早いほど様々なご提案が可能ですので、早めのご相談を推奨しています。
2.高精度な歯車加工技術
フレ・歯形など歯車精度が騒音に及ぼす影響は非常に大きく、いくら低騒音な歯車設計ができていたとしても、加工精度が良くないと騒音発生の要因となってしまいます。つまり、「低騒音歯車を実現する高精度加工」が可能な樹脂歯車メーカーを選択する必要があるのです。
4.騒音解決に関する課題解決事例をご紹介
材料変更と仕様の見直しで、大幅な騒音低減を実現!
【課題】
ギヤボックスからの騒音が当初の想定よりもかなり大きく、解決の糸口が見つからなくて困っている。
【ご提案】
お客様の研究所を訪問し、ギヤボックスから実際に出ている音を聞かせて頂きました。ギヤボックスの場合は歯車の精度とギヤボックスの出来が騒音の原因である可能性が高いため、歯車の精度測定とケースの出来映えを確認しました。その結果、歯車に騒音の原因があることが分かりました。そこで精度の向上とヘリカルギヤへの変更を提案し、騒音を劇的に改善することができました。しかし一般家庭で使用する機器とのことで、「コストが変わらずに更なる騒音の低減ができないか」と再度ご相談頂きました。成形材料の変更とヘリカルギヤの仕様見直しを改めてご提案させて頂き、期待通りの騒音低減を実現することができました。
5.まとめ
今回、樹脂歯車の騒音の代表的な要因と対策についてご紹介させて頂きました。騒音が発生してからではなく、歯車・金型設計段階から低騒音歯車のご相談をして頂く事が、低コスト・短時間で歯車を製作するポイントになります。ギヤプラスでも、樹脂歯車の試作・金型設計から騒音試験まで対応しておりますので、お困りの際はお気軽にご相談下さい。
ギヤプラスへお気軽にご相談下さい。
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