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PlasticGearBlog

2022.08.30

【研究紹介】無潤滑およびグリース潤滑実験による歯車の耐久性

プラスチック歯車は、温度や材質によっては吸湿などにより物性値が大きく変化するため、強度設計を行っても歯車損傷に悩まされることが少なくありません。そんな歯車損傷に有効なのがグリースです。今回は、金属歯車の樹脂化などにより注目される「プラスチック歯車の耐久性」に注目し、無潤滑およびグリース潤滑時のプラスチックギヤの耐久性について行った実験をご紹介します。

1.試験条件

今回は、動力吸収式歯車強度・耐久試験機を使用し、種々の材質にて10⁷回までの耐久実験を行いました。実験はピッチ円周速度1m/s、歯車諸元は、モジュール1,歯数30枚同士,歯幅5㎜で行いました。各種材質に歯面荷重5~40N/㎜で負荷をかけ強度を比較します。

2.各種材料の歯面荷重と耐久性を比較

今回の実験は、プラスチック歯車によく使用されるPOM,ナイロン,PI,PEEKの4種類10パターンで耐久性を比較しました。

この実験結果より着目されるのは、POMにガラス繊維を充填(POM-3)し、曲げ強度が非強化の2倍程度高い材質は寿命が短い事です。これは、ガラス繊維と母材のPOMの接着性が良くないことと、ガラス繊維によるアブレッシブ摩耗が影響していると考えられます。また、しゅう動性付与材料で基礎強度の低い材料も寿命が短かったのです。その一方で、リチウムグリース塗布潤滑下での実験では、無潤滑に比べ2倍前後の歯面荷重に耐えられ、耐久性が大きく向上しました。さらに、しゅう動性が向上することで動力伝達効率の向上にもつながることが考えられます。

3.POMの歯面荷重と耐久性の関係

この表は、POM材料の無潤滑,潤滑性材料およびグリース潤滑の場合の、歯面荷重と破壊までの積算回転数の関係を示しています。

POMの場合、しゅう動性が良好なほど耐久性が向上していることが分かります。プラスチックは粘弾性的挙動を示すため、摩擦による発熱のほか内部発熱があると言われています。しかし、グリースなどで潤滑をすれば、温度上昇は大きく抑えることができます。そのため、温度上昇を考えたときの粘弾性的発熱については、あまり神経質になる必要はないと考えています。

4.結論

今回の実験では、以下のことが考えられます。

①POMにガラス繊維を充填した曲げ強度が非強化の2倍程度高い材質は寿命が短い。

②しゅう動性付与材料で基礎強度の低い材料は寿命が短い

③グリースなどで潤滑をすれば、温度上昇は大きく抑えることができる

④リチウムグリースを塗布すると、無潤滑に比べ2倍前後の歯面荷重に耐えられ、耐久性が大きく向上する

このように、使用する材質やグリース塗布の有無によって、プラスチック歯車の耐久性は大きく変化することが分かります。そのため、試作段階から歯車耐久試験も平行して行うことが重要です。

5.歯車耐久試験はギヤプラスにお任せ下さい!

ギヤプラスはプラスチック・ギヤ・システム研究所(PGS研究所)にてプラスチックギヤの騒音・耐久性を研究しております。さらに、プラスチックギヤの設計・試作・金型製作・検査・量産も行っておりますので、歯車耐久試験結果を踏まえた改善のご提案も可能です。

プラスチックギヤの耐久性でお困りの際は、ギヤプラスにご相談下さい。

*この内容は、ギヤプラスを運営します株式会社チバダイス発行,著者武士俣貞助による「プラスチック歯車 トライボロジー的特性と強度・低騒音設計」より抜粋し編集しています。

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