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PlasticGearBlog

2025.05.13

必ず知っておきたい!樹脂選定の基礎知識

樹脂歯車は、使用する材料によって精度や寸法に大きな影響を受けます。さらに、世界的に進むプラスチック削減の流れを受け、各業界で樹脂製品に関する規制が強化されています。そのため、樹脂の選定時には、より多くの視点からの検討が求められています。今回は樹脂選定時のポイントについてご紹介します。

1.樹脂歯車に良く使用される材料とは

プラスチック歯車には、強度・耐久性・自己潤滑性などの性能が求められるため、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)が主に用いられます。

  • 汎用エンプラ:POM(ポリアセタール)、PA(ナイロン)、PC(ポリカーボネート)など
  • スーパーエンプラ:PEEK、PPSなど

近年では、自動車の軽量化などのニーズに伴い金属部品の樹脂化が加速し、300℃を超える高温環境下でも使用可能な高性能樹脂の開発が進んでいます。また、環境に配慮した新材料への注目も高まっています。

2.樹脂選定で考慮すべき7つのポイント

1.物理的特性

「物性」とは、物質が持つ物理的な性質を数値で表したもので、これをまとめたものが「物性データ」です。樹脂歯車の材料選定では、「機械的特性」「熱的特性」「物理的特性」の把握が特に重要です。使用環境や歯車に求められる性能を明確にした上で、適切な樹脂を選びましょう。

2.規制上の考慮事項

近年では、製品のリサイクルや処分時における人体や環境への影響を抑えるため、特定の化学物質に対する規制が強化されています。たとえば、EU域内に輸出される完成品にREACH規則の規制対象物質が含まれている場合、その製品は輸出できません。これは、たとえ部品を日本国内で製造し、直接EUに輸出しない場合でも、その部品が組み込まれた製品がEUに輸出されるなら、REACH規則への対応が必要になることを意味します。樹脂の中にはこうした規制対象物質を含むものもあるため、材料選定時には各国や業界の法規制を十分に確認することも欠かせません。

3.環境への配慮

海洋プラスチックごみによる環境汚染は世界的な課題となっており、EUをはじめ、カナダや中国など各国が使い捨てプラスチック製品の規制・禁止に乗り出しています。今後はその対象がさらに広がり、樹脂歯車のような工業用途の製品にも、環境負荷を抑えた設計や素材選定が求められる可能性があります。そのため、早い段階から再生プラスチック、生分解性プラスチック、バイオマスプラスチックの導入を検討することも必要かもしれません。

4.収縮率

高品質な樹脂歯車の製造には、成形収縮も重要な検討項目です。選択する樹脂の繊維配向方向、非晶性と結晶性では成形収縮率が異なるため、設計段階から検討しなければなりません。基本的に、非晶性プラスチックより結晶性プラスチックの方が成形収縮率が大きくなります。

5.添加物

プラスチック歯車に使用される樹脂材には、成形加工性の向上や歯車に求められる性能(強度・寸法精度・外観など)に応じて、添加剤・強化材・充填剤が組み合わされた成形材料が用いられます。中でも、強度・剛性・クリープ特性や疲労強度、寸法安定性を高める目的でガラス繊維強化樹脂を採用するケースが多く見られます。ただし、ガラス繊維の含有率が高い材料は、成形機のスクリューやシリンダーを摩耗させやすく、対応できる設備や技術を持つ企業は限られます。そのため、成形性、使用環境、そして歯車に求める機能を総合的に考慮したうえで、最適な材料を選定することが必要です。

6.コスト

樹脂価格は、生産コストを抑えるため非常に重要です。量産時のランニングコストが大きく変わります。しかし、歯車の使用環境によって使用可能な材料が限られることもあり、ただ安い樹脂を選択すればいいというわけにはいきません。その際は、金型で樹脂量を極限まで少なくする型設計などの対策を行うことも可能です。

7.入手可能性

昨今のウクライナ情勢などによるエネルギーコストの上昇や、物流費の上昇、為替影響によりプラスチックの原料が高騰しており、成形材料の価格の値上げが繰り返されております。そんな中、東レやデュポン社は「注文通りに納入できない」「当事者(自分たち)には責任なし」「いつ再開できるかは不明」というFM(フォースマジュール)宣言を行い、樹脂の入手が以前より難しくなっていました。そのため、使用する樹脂の入手可能性も同様に検討する必要があります。

3.最適な材料選定&削減を実現できる理由

1.材料廃棄ゼロの金型製作を実現!

当社では、材料研究者や歯車研究所とのネットワークを活用し、ランナーなどの再利用を含めた材料ロスの低減に取り組んでいます。お客様との綿密な打ち合わせを通じて、廃棄ゼロを目指した環境に配慮した金型設計・製作を実現しました。ランニングコストの削減や再生材の利用を検討中の方のお手伝いも可能です。

2.国内外の樹脂メーカー様との連携

ギヤプラスでは国内外の樹脂メーカーの研究者やプラスチック歯車研究所がタッグを組み、最適な歯車や材料のご提案が可能です。また、お客様の歯車生産を止めないよう、樹脂価格の変動や入手可能性についても、いち早くお知らせするよう努めております。

3.環境規制に対応した歯車製作

RoHSやREACHなどの規制に対応した材料での歯車製作や、指定材料の調査も可能な場合がございます。

5.まとめ

ギヤプラスでは、歯車の製造だけでなく、使用する樹脂材料の選定に関するご相談にも対応しております。さらに、各種プラスチック材料を用いた歯車の成形・耐久試験・騒音試験を実施し、性能比較を行うことも可能です。射出成形による試作サービスでは、複数の材料による歯車試作を短納期でご提供し、開発スピードの向上をサポートします。材料選定や試作でお困りの際も、ぜひお気軽にご相談ください。

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