2024.08.03
寸法・精度を左右する5つの要因と対策
樹脂歯車の生産は、精密な寸法と高い精度が求められる非常に重要な工程です。一般的には射出成形により製造されますが、このプロセスにおいては射出温度や樹脂の特性により体積の膨張・収縮が生じます。そのため、高品質歯車の金型製造には多くのデータとノウハウに基づいた金型設計が欠かせません。本ブログでは、樹脂歯車の成形収縮の基本をまず理解し、歯車の寸法や精度を左右する5つの要因と、それに対する対策についてご紹介いたします。
1.成形収縮とは
樹脂の体積は、温度が高いほど膨張し、低いほど収縮します。そのため、金型のキャビティーに充填された樹脂は、冷却され固化する際に体積が収縮します。この現象を成形収縮といいます。さらに、結晶性樹脂の場合、非結晶性樹脂と比べて収縮率が大きく、成形時に生じた残留応力の緩和や成形後に結晶化が進行する「後収縮」を考慮する必要があります。そのため、後収縮を見越した成形条件やアニール処理によって対応します。
2.成形収縮が樹脂歯車に与える影響
成形収縮により、「寸法精度」と「形状精度」に影響を与えます。歯車の直径や歯の形状が変わると、噛み合いの精度が低下し動力伝達の効率が悪くなります。さらに、歯の形状が歪んだり歯面に凹凸が生じると、歯車の回転が滑らかでなくなり、振動や騒音の原因となります。また、歯面の摩耗が早まる可能性もあります。特に高精度が求められる歯車では、寸法など微妙な変化が大きな問題となるため、歯形変形を見越した設計を行うなど、高度なノウハウと精密加工技術が要求されます。
3.成形樹脂歯車の寸法・精度を左右する5つの要因
成形樹脂歯車の寸法や精度は、主に金型精度、成形条件、歯車形状、材質、周囲温度・湿度などによって大きく左右されます。しかし、これからご紹介する5つの要点を抑えることで、短期間で寸法・精度出しを実現することが可能です。
1)金型精度
歯車寸法に最も大きな影響を与える要素は金型の精度です。成形による寸法調整には限界があるため、特に歯車部分であるキャビティの精度向上が重要です。各種材料の収縮率を正確に見込んだ設計に基づき、ミクロン単位で狙い通りの寸法に加工する高精度設備と技術が求められます。
2)材料
樹脂は収縮方向の違いや表面と内部の収縮が不均一であるため、想定より収縮が大きくなることや逆に収縮が少ないことがあります。これにより、材料によって歯車寸法が大きく変わることがあります。そのため、材料ごとに収縮率や成形条件をデータ化して蓄積し、小さな寸法や精度の変化にも柔軟に対応できるようにすることが重要です。
3)成形条件
歯車の寸法は、金型温度や射出圧力、保圧、冷却時間の調整によってある程度の調整が可能です。そのため、高い成形技術が安定した歯車寸法をもたらします。しかし、推奨条件を外れた過度な調整は樹脂の性能を損なう可能性があるため注意が必要です。
4)歯車形状(インサート・リブ・肉厚差など)
樹脂歯車は、リブ形状や肉厚差、インサート部品によって、歯車寸法や精度は大きく異なります。インサート部品の収縮率は樹脂と異なるため、収縮差によって歯車全体が変形する可能性があるのです。また、リブ形状や肉厚差により冷却速度が異なるため収縮が不均一になります。その結果、歯車の寸法や精度が低下することもあるため、歯車設計は非常に難しく極めて重要な工程です。
5)ゲート(種類・位置・数・サイズなど)
ゲートは成形品に樹脂を流し込む入口であり、寸法や精度に大きな影響を与えます。歯車の種類や大きさ、形状、樹脂の特性などを考慮して、ゲートの種類・位置・数・サイズを慎重に決定する必要があります。ゲート設計を誤ると、寸法のバラツキや精度不良、さらには外観不良が発生する可能性があるため注意が必要です。
4.歯車設計・依頼先選定時からできる3つの対策
1)設計段階から歯車メーカーに相談
設計段階から歯車メーカーへ相談することで、適切な歯車形状のご提案から過度な公差設定の防止など、幅広いVE/VA提案が可能になります。その結果として、良い樹脂歯車を短期間で製作することができ、製品競争力の向上に繋がります。
2)試作だけでなく、金型製作・成形も可能な歯車メーカーの選択
樹脂歯車の試作・量産を考えている方は、試作だけでなく、金型製作や成形にも精通している歯車メーカーへの依頼をお勧めしています。担当者様の負担を減らしつつ、短期間で高品質な歯車製品の開発が可能です。
①歯車の試作・金型製作・量産が一社で完結し、依頼者の手間と時間を削減 ②歯車に特化した各種データの収集により、短期間で要求する寸法や精度を実現
3)高精度加工機による歯車製作
厳しい寸法公差や高い歯車精度を満たすためには、高精度加工機が必須です。射出成形歯車は、成形すると成形収縮や樹脂特性などが原因で、キャビティーの歯車精度よりも成形品の精度は悪くなってしまいます。そのため成形品の歯車精度や寸法公差が厳しい場合は、ミクロン単位での加工を可能とする高精度加工機により、高精度にキャビティーを製作する必要があるのです。
5.まとめ
今回は、成形歯車の寸法・精度を左右する5つの要因とその対策について執筆しました。歯車製作でお困りの方にとって、一助となれば幸いです。ギヤプラスでは、樹脂歯車の研究開発、設計、試作、金型製作、量産、試験を一貫して行い、お客様の課題に合わせて柔軟に対応させていただきます。樹脂歯車に関するご相談がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
ギヤプラスへお気軽にご相談下さい。
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